企画内容

◉村田喜代子さん講演

『筋骨と花束』

村田喜代子さんは、現代の作家として、もっとも早い時期から尾崎翠への愛と共感を語ってきました。
97年のエッセイ「尾崎翠—青い櫛のミューズ」や、98年の筑摩書房版尾崎翠全集の上巻の栞に寄せた「尾崎翠という筋骨」などです。
また、ある文庫では、他の作品について触れながら、

「尾崎翠のあの奇妙なおかしみの漂う『第七官界彷徨』を読んだとき、この作者と自分は同じ気質の女であると直感した。」(文春文庫『青春の一冊』より・父恋うる記)

とも書いています。
作品論だけでなく、大胆にも「同じ気質の女」であると把握されるところに、作家の本領がありますが、同じ女性作家としての尾崎翠について縦横に語って頂きたいと思います。

映画『第七官界彷徨—尾崎翠を探して』が完成した翌99年、福岡県女性センターで、同作の上映および村田さんと浜野監督の対談が行われました。それが機縁となり、今回の講演が実現しました。

村田喜代子さん※村田喜代子さん=「鍋の中」で芥川賞(1987年)受賞。同作は黒澤明監督が『八月の狂詩曲』として映画化した。映画化作品には、他に恩地日出夫監督『蕨野行』。
多くの作品で、女流文学賞(『白い山』)平林たい子文学賞(『真夜中の自転車』)紫式部文学賞(『蟹女』)川端康成文学賞(『望潮』)芸術選奨文部大臣賞(『龍秘御天歌』)など受賞。最近では『故郷のわが家』で野間文芸賞、『ゆうじょこう』で読売文学賞。

◉映画『第七官界彷徨—尾崎翠を探して』上映と、吉行和子さん+浜野佐知監督対談

第七官界彷徨—尾崎翠を探して第七官界彷徨—尾崎翠を探して
第七官界彷徨—尾崎翠を探して第七官界彷徨—尾崎翠を探して

※スチールはモノクロですが、映画はカラーです。

吉行和子さんは著名な女優さんです。98年の『第七官界彷徨—尾崎翠を探して』で、尾崎翠(白石加代子)の親友である松下文子役を演じ、また、06年の『こほろぎ嬢』では、土田九作の姉である松木夫人を演じています。

吉行エイスケ(父)吉行淳之介(兄)や吉行理恵(妹)といった文学の血脈ですが、ご自身も尾崎翠の作品を愛し、NHK・BSの「私の1冊 日本の100冊」(2008年)でも「第七官界彷徨」について語りました。

吉行和子さん※吉行和子さん=57年に劇団民藝『アンネの日記』のアンネ役でデビュー。69年にフリーになる。74年の舞台『蜜の味』で、紀伊國屋演劇賞個人賞。
59年に『にあんちゃん』『才女気質』の演技で毎日映画コンクール女優助演賞。78年に大島渚監督『愛の亡霊』、14年に山田洋次監督『東京家族』で日本アカデミー賞優秀主演女優賞。2002年毎日映画コンクール田中絹代賞。
エッセイ集『どこまで演れば気がすむの』で、1984年の日本エッセイスト・クラブ賞。

浜野佐知監督※浜野佐知監督=1998年に自主製作映画『第七官界彷徨ー尾崎翠を探して』を制作。新たな尾崎翠ムーブメントの発端となる。2001年の『百合祭』(吉行和子主演)は世界各地で上映され、いくつもの賞を受けた。06年には鳥取県の支援を受けて、尾崎翠原作の『こほろぎ嬢』を発表。「新たな県民映画」(日本海新聞)と評される。11年には宮本百合子と湯浅芳子を描いた『百合子、ダスヴィダーニヤ』を発表。なお、09年、東京の日本近代文学館で2日にわたって行われたシンポジウム「尾崎翠の新世紀・第七官界への招待」では実行委員長を務めた。

◉パフォーマンス KEiKO*萬桂さん

KEiKO*萬桂さんは、岩美町にアトリエを持つ美術作家で、インスピレーションのままに即興で描く「舞書」パフォーマンスは国際的な評価を得ています。最近では、昨年ヘルシンキで舞書「輪廻転生」を披露し、大きな反響を得ました。

2010年に、日本海新聞が「第七官界彷徨」を復刻連載した際に、挿絵を担当し、自身として初めての版画によって、尾崎翠のモダンで懐かしい世界を見事に甦らせました。

また、2012年には日本海ケーブルネットワークで「時代をこえてつながる二人の女性アーティスト 尾崎翠とKEiKO*萬桂」が放送されました。

KEiKO*萬桂さん※KEiKO*萬桂さん=兵庫県豊岡市に生まれる。祖父母、母について書道を学ぶ。多摩美術大学卒業。ハウスデザイナー、フリーランスデザイナーとして小泉今日子など著名人のドレスなどデザインする。
多くの個展で、日本アートアカデミー賞など受賞。03年のパリ個展では初のアートライブ(舞書)を披露した。
帰国後、山陰の自然から受けるインスピレーションを体感する中から生まれる、墨を基調にした独自の作品、および舞書が国内外で注目されている。2008年、岩美町にアトリエを移す。
2011年の三徳山開山1300年奉納舞書『天之歌垣 (あめのうたがき)』は大きな話題を呼んだ。

◉交流会
トークタイムを設け、榎本武利町長、土井淑平・尾崎翠フォーラム代表などが尾崎翠について語ります。

◉尾崎翠ゆかりの地巡り
ゆかりの地巡りは、尾崎翠フォーラムでも毎年行われてきましたが、今回は岩美町に絞り、尾崎翠作品と土地との照応関係を、具体的に鑑賞しながら巡ります。(資料作成:西尾雄二)